6月10日~12日の3日間にかけて東京のホテルニューオータニ他で開催された、五極ユーザ会合、五庁長官・ユーザ会合、及び、サイドイベントに、小林理事長、奥脇副理事長、上野専務理事、並びに、国際連携ワーキンググループの伊東リーダ、宮下メンバー、田中メンバー他が参加しました。今回は10年ぶりに日本でリアル開催された五庁会合であり、JPO河西長官とJIPA小林理事長の共同議長の下、多くの重要トピックについて、熱い議論が交わされました。
これらの会合では、短期間ながらも幅広い主題に関する活発な討議が行われ、JIPAからの参加者はシステム、手続調和、ユーザの利便性向上や審査品質の向上に向け、日本のユーザを代表して積極的に議論に参加し、意見・要望を発信してまいりました。

1.五極ユーザ会合(6月10日)
五庁長官・ユーザ会合に先立ち、五極ユーザ会合(JIPA、AIPLA、IPO、BE/EPI、KINPA、PPAC)が開催されました。この会議では、6月11日開催の五庁長官・ユーザ会合に向けて、事前の議題内容の確認と、各議題についての準備資料の相互紹介、ユーザ提言の擦り合わせ等が行われました。
具体的には、グローバルアサイメント、グローバルドシエ、電子署名等の項目について、現在の取り組み状況を俯瞰した上で、今後の進め方を中心に検討を行いました。また、戦略トピックとして取り上げられているAI技術の利用(庁内利用、ユーザ利用の双方含む)に関連する知財実務上の諸問題に対しては、各国・地域での現状や取り組み状況を踏まえた活発な議論が行われました。


2.五庁長官・ユーザ会合(6月11日)
五庁代表団(JPO、EPO、USPTO、MOIP※、CNIPA)、WIPO代表団、及び五極ユーザ代表団により、五庁長官・ユーザ会合が開催され、知財にかかわる重要施策や諸問題に関する議論や検討が行われました。※旧韓国特許庁(KIPO)から昇格したMinistry of Intellectual Propertyの略。

技術協力(Technical Corporation)
五庁において制度調和等の検討が進められているグローバルアサイメント、グローバルドシエについて各リード庁から現在の検討状況及び今後の進め方について説明が行われ、その内容に対する質疑応答やユーザの発言等が行われました。ユーザが検討している電子署名の調和の可能性について意見交換が行われ、また、五庁で取りまとめているAI関連発明の審査基準及びAIによりなされた発明の発明者性の扱いについてのアップデートが共有されました。
・グローバルアサイメント
リード庁であるUSPTO及びMOIPより、これまでの検討(各種要件、共通システムにむけての要件定義や実現可能性調査)の報告があり、WIPOが行っている実現可能性調和の結果に基づいて、次回会合(11月)で実現に向けて検討することが共有されました。プロトタイプの取組みについてWIPO及びEPOから紹介がありました。ユーザからは、本プロジェクトは最優先事項であること、利用者にとって効率的かつ実用的な仕組みとすることが重要であることが強調されました。さらに、ユーザからプロトタイプの評価を含む具体的な進展に対する期待が示され、継続的な意見交換及びタイムラインの設計が提案されました。
- グローバルドシエ
情報活用の高度化を通じたユーザ負担軽減および手続効率化に向けた機能強化について議論が行われました。とくに、USPTOからグローバルドシエの情報を活用した事前入力機能が紹介され、作業効率向上・入力ミス削減への効果が期待される旨が説明されました。他庁からも出願人側から書類を送信するプッシュ型のグローバルドシエ活用の可能性について賛同意見が述べられました。ユーザからも、グローバルドシエ機能の拡張に対する期待が示されました。
- 電子署名
各庁でユーザから提案された共通利用可能な電子署名形式の検討および文書の庁間交換の仕組みについて議論が行われました。また、電子署名の導入状況や対応方針が共有され、今後の検討継続の必要性についても確認されました。
・AI関連発明の審査実務及びAI生成発明の発明者性
JPO及びMOIPから、五庁で形成されるNET-AIタスクフォースの成果物である五庁の審査基準や発明者性の取扱いの比較資料のアップデートが共有されました。ユーザから、認知度を高めるため、各庁のウェブサイトにも掲載することの提案がなされ、今後も継続的な連携をしていきたい旨の発言がありました。
戦略トピック:AI技術の活用による高度で信頼性の高い知的財産制度
・戦略トピックの前半では、五庁やWIPOにおけるAIの利用状況、今後の方向性についての報告がありました。いずれの庁からも意思決定プロセスに「人」が入るHITL(Human in the Loop)の考え方が重要との考えが示される一方、受動的な形で人が関与することは逆にリスクであるとの指摘もありました。JPOからは特に、AIを利用した新たな分類GAIA-Indexの紹介があり、五極ユーザが関心を寄せました。
・戦略トピックの後半では、五極ユーザからAIの利用状況などの紹介があり、国際連携ワーキンググループの田中メンバーから、日本における知財実務でのAI利用の現状と展望について先進的企業の事例の紹介、生成AIの活用促進に向けた五庁及びWIPOへの提言行を行いました。
また、五極ユーザ発表の総括として、AI活用に関する下記提言を五庁及びWIPOに向けて代表提言を行い、五庁をはじめとする参加者から高い評価を受けました。
<五極ユーザ共通提言>
①AI利用の基本原則:庁でのAI利用促進と利用の透明性確保、AI利用時の未公開情報の漏洩防止、意思決定への人間の関与と説明責任の維持
②審査品質の確保:AI生成・AI利用公開物の先行技術観点での取り扱いガイドライン策定、進歩性欠如指摘のために利用するAIナレッジへの基準日以前の当業者水準の反映
③コラボレーションとユーザ支援;五庁でのベストプラクティス共有とAIによる悪影響監視・改善、出願や応答書作成におけるベストプクティスや監督なしのAI利用リスクについて個人発明家、SMEなどのユーザ向けガイダンス提供
その他、ビジョンステートメントの改訂の紹介がありました。イノベーションの促進、功利的で効果的な特許制度を考えることを五庁の使命として反映されました。


3.サイドイベント:PPH 20th Anniversary Forum(6月12日)
五庁長官・ユーザ会合に引き続き、サイドイベントとして、” PPH 20th Anniversary Forum :Tracing the Path and Envisioning the Future of PPH”が開催されました。今年20周年を迎えるPPHは、2006年に日米間で開始され、現在では56の特許庁間でネットワークが形成され、活用されています。本イベントは、PPHのこれまでの歩みを振り返るとともに、将来展望を示すことを目的として開催されたイベントになります。
本イベントの前半では、まず、JPOによるPPHのこれまでの歩みに関するプレゼン及びビデオ上映に引き続き、各特許庁における状況等に関する紹介が行われました。そして、JPOをモデレーターとして、各ユーザ団体(JIPA、AIPLA、BE、IPO、KINPA、PPAC)によるパネルディスカッションが行われました。JIPAからは奥脇副理事長がパネリストとして登壇し、製薬業界におけるPPHの重要性についての紹介、及び、JIPAの主要専門委員会から寄せられたPPHアンケート結果に基づく、PPHの利用状況、課題、PPHの更なる発展に向けた提言を行いました。また、五極ユーザのPPHに対する提言を総括した発表をBEのパネリストから行って頂きました。

後半では、JPOをモデレーターとし、WIPO、USPTO、UKIPO、CIPOによるPPHの将来展望に関するパネルディスカッションが行われました。
また、最後にPPHの新しいロゴについて紹介がありました。
なお、同フォーラムの様子は、以下のYouTubeチャンネル「PPH 20th Anniversary」からご覧頂けます。
https://www.youtube.com/live/S_UktT2dr64?si=4ALkbFhBncvgO24L
