2026年10月8日(木)、JIPA サービス・コンテンツ委員会は、日清紡ホールディングスにて、声優、漫画家、イラストレーター、クリエイターのマネジメント業に携わっておられる5名を迎え、第2回意見交換会を開催いたしました。
今回は、企業とクリエイターが継続して協働できる契約・関係性、若手クリエイターへの支援、生成AIによる権利・アイデンティティへの懸念と活用、人間だからこそ生み出せる表現の価値をテーマに、事前質問に沿って率直な意見交換を行いました。
| 開催日 | 2026年10月8日(木)15:00~17:00 |
|---|---|
| 開催形式 | リアル・オンラインのハイブリッド |
| 場所 | 日清紡ホールディングス |
| テーマ | 企業とクリエイターがともに持続的に活動できる環境と生成AI時代の創作の価値 |
| 参加者(敬称略) | 個人クリエイター:5名 福宮 あやの(声優)、新山駒落(プロデュース業等)、洋介犬(漫画家)、 高倉 知子(漫画家)、浅田 セイホウ(イラストレーター) JIPA サービス・コンテンツ委員会委員:4名 |

<意見交換会>
【質問1】企業との仕事で納得できる契約内容・条件
ご回答・主なご意見:
利用目的、媒体、期間、二次利用、報酬・支払時期、修正回数、クレジット、ポートフォリオ掲載、キャンセル時の扱いなどを、仕事を始める前に明確にしてほしいとの意見がありました。
著作者人格権の不行使を一律に求めるのではなく、トリミングや文字載せなど必要な改変の目的と範囲を説明し、氏名表示や作品の同一性に配慮した内容にすることが望ましいとの意見が示されました。
成果物やラフ、音声等をAI学習に利用するか、第三者へ提供するか、制作工程で生成AIを利用するかを契約上明示し、本人が判断できるようにする必要があるとの指摘がありました。
【質問2】良好な関係を築き、再び一緒に仕事をしたいと思える条件
ご回答・主なご意見:
返信の時期、意思決定者、連絡窓口、修正指示をあらかじめ整理し、すぐに回答できない場合でも受領と回答予定を伝えることが、安心感につながるとの意見がありました。
企業が『なぜこのクリエイターに依頼したのか』『何を期待しているのか』を説明し、納期や修正量について無理な場合には断れる関係をつくることが重要との意見が示されました。
問題が発生したときに事実を調査し、経緯と対応を説明することや、条件交渉を支える担当者の姿勢が、継続的な信頼につながるとの経験が共有されました。
【質問3】若手クリエイターが活動を始め、続けるために必要な支援
ご回答・主なご意見:
制作物がどのように受け止められたかを本人へ伝えること、同業者とつながる機会や相談相手を設けることが、孤立を防ぎ、活動を続ける意欲につながるとの意見がありました。
単価だけでなく、仕事量、案件間の空白、入金時期、兼業を含む生活設計など、活動を続けるための現実的な情報を得られる仕組みが必要との指摘がありました。
生成AIにより、若手が実務経験を積んできた定型的な仕事が減る可能性もあるため、分野ごとの影響を把握し、新たな育成の入口を検討する必要があるとの意見が示されました。
【質問4】企業とクリエイター双方にとってより良い業界の仕組み
ご回答・主なご意見:
モデル契約や発注前のチェックリストを整備し、クリエイターに配慮した取引方針を先行企業が公表することで、他社も参照できる実務上の基準をつくる案が挙げられました。
個人が契約やトラブルを一人で抱えないよう、業界団体、編集者、マネジメント等が相談や情報共有を支える必要があるとの意見がありました。
公的な法律相談窓口や弁護士事務所はハードルが高いため、気軽に相談できる法律上の課題を顕在化、あるいは弁護士事務所への窓口業務を担当する民間の相談機関や国の支援が望まれるとの意見が示されました。
【質問5】生成AIによる権利・アイデンティティの保護と活用
ご回答・主なご意見:
絵柄や声の無断学習・模倣、ラフや中間成果物の利用、再委託先での非開示利用など、本人が把握できない形でアイデンティティが利用されることへの懸念が示されました。
一方で、反復作業、初期案、資料整理など、制作の補助や効率化に生成AIを活用する余地はあるとの意見もありました。最終的な品質と権利面の判断は人が担うことが前提とされました。
生成AIの利用を一律に判断するのではなく、AIモデルの種類、学習データ、本人の同意、利用工程、表示、責任主体、報酬、再委託先の管理を具体的に確認する必要があるとの認識が示されました。
【質問6】生成AIに代替できない人間ならではの表現・感情の核
ご回答・主なご意見:
作者の人生経験、価値観、思想、身体感覚、誰に何を伝えたいかという意図は、作品の背景や意味と結びついており、外見を似せるだけでは代替できないとの意見がありました。
構図、声、間、線、言葉などを選び取る過程や、対話や現場の空気に応じて表現を変える即興性にも、人間ならではの価値があるとの意見が示されました。
情報伝達を主目的とする表現では生成AIへの置換が進む可能性がある一方、作者の背景、制作過程、ライブ性そのものを重視する表現の価値が、改めて注目される可能性があるとの意見がありました。
<終わりに>
今回の意見交換会を通じて、契約書の整備に加え、企業が必要とする権利や改変の範囲を具体的に説明し、クリエイターが無理な条件を断ることのできる関係を築くことが、品質と継続的な協働の双方を支えるとの認識を深めました。特に、生成AIについては、利用するか否かの二者択一ではなく、AIモデルの種類、学習データ、同意、制作工程、表示、責任、報酬などを個別に確認し、透明性を確保することが重要です。同時に、人の経験、意図、制作過程、受け手との関係性をどのように評価し、対価につなげるかが、今後の大きな検討課題であることを再認識することができました。
サービス・コンテンツ委員会では、企業とクリエイター双方が安心して協働できる取引環境の整備に向けて、契約実務、相談の仕組み、若手支援、生成AI利用の透明性について、引き続き検討を進めてまいります。最後になりましたが、ご多忙の折、率直で示唆に富むご意見をご共有くださいましたクリエイターの皆様に、心より御礼申し上げます。
