| 編著 | 南部 朋子,平井 佑希 著 |
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| 出版元 | 日本法令 A5判 336p |
| 発行年月日・価格 | 2021年12月発行 3,300円(税込) |
仕事柄,しばしば社内の他部門より著作権に関する相談を受ける。例えば「ウェブサイトやパンフレットに自社製品の写真を掲載しようと思う。当該写真は○○で入手したものだが,著作権法上問題はないか」といったものである。著作権法に関する基本書を一通り読んでいても,これらの問いに自信をもって回答することは意外と難しい。本書は企業の著作権担当者向けに,日常業務における著作権案件を想定した内容となっている。
本書は二部構成となっている。第1部の「著作権の基本的知識」では著作権法の内容が確認的に記載されている。初級者から中級者クラスを意識したとの事であり,筆者も認めている通り,同法について一定の知識がある者にとっては物足りなく感じるかもしれない。一方で,企業内で実務担当者がよく受ける質問である製品の写真や取扱説明書の著作物性など,企業実務で問題になりやすい論点を,豊富な裁判例を基に手厚く解説している。裁判例のため,いずれもなぜ著作権侵害が成立するのか,あるいはしないのかといった理由が論理的に記されている。この部分を読み込むだけでも,社内各部門からの問い合わせに対して,論理的な回答を行う力が鍛えられるだろう。
第2部では,第1部における著作権法の基本的事項を踏まえて,実際に著作権案件に接した場合に,どのような順序で,どのように侵害か否かを検討すればよいかが示されている。著作物を利用する立場から見ても,他社の著作権を侵害しないためにはどのように考えればよいかも,この点の裏返しのため,基本的には同じフローで考えることができる。一方で,著作権を利用する側の立場にとっては,適法に利用するためには狭義の著作権だけではなく,著作者人格権やみなし侵害,著作隣接権まで全ての権利を考慮しなければならない,と説く。また,実務に携わっているとしばしば見かける,プレゼン資料にアニメのキャラクターを登場させたり,関連する新聞記事を複製して関係者に配布したりする事例の回避方法も記されている。すなわち「なんとなく」での利用を見直したうえで必要性を再考するよう諭すことと,著作物を利用せずに想起させること,リンクやインラインリンクを活用することによって目的はおおむね果たせるとしている。自社内でもこれらの事例は稀に見かけるので,啓発活動を行う上での参考にしたい。
前述の通り,企業における著作権問題は,学者が書いた基本書を読んでも応用できない部分がある。実務との乖離に悩んでいる担当者は,本書を手に取ってみてはいかがだろうか。
(紹介者 会誌広報委員 K.I)
