ChatGPTの法律

編著田中浩之 河瀬季 古川直裕 大井哲也 
辛川力太 佐藤健太郎 柴崎拓 橋詰卓司 
仮屋崎崇 唐津真美 清水音輝 松尾剛行 著
出版元中央経済社 A5判 168p
発行年月日・価格2023年6月26日 1,980円(税込)

 「ChatGPT」は,人間のように自然な会話が行える対話型AIサービスである。工夫次第で色々な用途に使えるサービスであり,2022年11月に米国OpenAI社がリリースして以降,その性能の高さから大きな注目を集めている。近年ではビジネスで「ChatGPT」を活用することも期待されているが,一方で,その性能の高さから悪用される懸念も出てきており,使い方に留意しなければならない。
 本書は,生成AIの技術や法律に詳しい著名な先生方が執筆されたもので,「ChatGPT」の仕組み・利用形態などの基本的・技術的な概要説明はもちろん,現在の法制度(個人情報保護法,著作権法等)に関連する論点も深掘りしており,知財担当者として認識しておくべきポイントが沢山書かれている。
 第5章にて「ChatGPT」を個人・ビジネスで利用する際の留意点について具体的な事例を交えて解説しているが,第5章だけで本書全体の約半分を占めている。それだけ,ChatGPTを利用するにあたって留意すべき点が多いと解釈することができる。私も社内で生成AIを今後どのように業務に活かしていくか検討することがあるが,本書の中で挙げられている,ユーザーがチャットに入力するプロンプト(命令文)の中に自社の秘密情報(営業秘密・限定提供データ)や他人から秘密保持義務を負う情報を誤って含めてしまうという情報漏洩の事故は,身近に起こりうるリスクとして,ChatGPTを利用するにあたって気を付けなければならないと感じている。ChatGPTは,ユーザーとしては知りたい情報を“入力する”だけで済むため誰でも操作しやすい便利なサービスであると考えられるが,AIリテラシーを十分に備えていない状態で使うと上記のような事故が起こりかねない。本書では,上記以外の留意点も挙げたうえで,企業が対策を打てるよう「社内ガイドラインへの落とし込み方」まで丁寧に説明している。サンプルもあるため,これから社内でガイドラインを策定するという方にとってはまさに役立つ内容である。
 第6章では,ChatGPTの未来として,ビジネスにおける活用の展望が書かれている。将来はChatGPTのようなAI技術ありきで社内業務が行われることが想像でき,今のうちからAIリテラシーを十分に身に付けておく必要があると考えさせられる内容になっている。
 ChatGPTとは何かという基本的な理解を深めるために役立つのはもちろんのこと,本書を読むことで一定のAIリテラシーを身に着けることができるだろう。実際にChatGPTのユーザーになりビジネスとして使うことを検討する企業担当者にとってぜひお勧めしたい一冊である。

(紹介者 会誌広報委員 K.M)