AIと著作権

編著上野達弘 奧邨弘司 編著
出版元勁草書房 A5 352p
発行年月日・価格2024年2月発行 3,300円(税込)

 本書は,AI技術の急速な進展に伴い注目を集めている著作権法分野の重要な論点を包括的に扱った専門書である。本書は,A I の概要から,日本や諸外国における著作権法上の規定,AIによる学習や生成物の著作権侵害の成否,さらにはAI生成物の著作物性まで,AIと著作権に関する幅広い論点を詳細に検討している。
 まず,本書のPartⅠ「序論」では,AIの基本的な概念や,AIと著作権をめぐる諸論点が概観されている。AIの定義や発展の歴史,そして生成AIブームの展望など,AIをめぐる基礎的な理解が得られる。
 PartⅡ「AIによる学習の侵害成否」では,日本の著作権法30条の4を中心に,情報解析に関する権利制限規定が分析されている。30条の4と旧47条の7との比較検討,著作物に表現された思想または感情の享受の目的を併有する場合の情報解析の可否,著作権者の利益を不当に害する場合を除くとしている30条の4柱書但書規定の解釈など,きめ細かな分析がなされている。さらに,英国,欧州,スイス,シンガポールなど,諸外国における情報解析に関する権利制限規定の動向も詳しく紹介されている。
 PartⅢ「AIによる生成の侵害成否」では,AI生成物と著作権侵害の問題が検討される。依拠性や類似性の観点から,AIによる生成物が著作権法上どのように評価されるべきかが論じられている。また,AIによる生成に関与する行為主体の特定や,準拠法の決定など,実務上の論点にも踏み込んでいる。
 PartⅣ「AI生成物の著作権保護」では,AI生成物の著作物性が中心的な論点となる。著作物性の判断基準,AI生成物の著作権が認められる場合の権利内容,立法論としてのAI生成物保護の方向性など,AI生成物の法的地位をめぐる重要な論点が分析されている。さらに,イギリスの著作権法におけるコンピュータ生成物の保護制度も紹介されている。
 最後のPartⅤでは,AIと著作権をめぐる諸論点について,著名な研究者らによる座談会が収録されている。AIによる学習の侵害成否,AIによる生成の侵害成否,AI生成物の著作権保護など,本書で扱われた主要な論点について,専門家による活発な議論が展開されている。
 本書の特徴は,AIと著作権をめぐる最新の議論を網羅的に取り上げ,理論的な分析と実践的な示唆を丁寧に提示している点にある。AIの急速な発展に伴い,著作権法の解釈や立法論においても新たな課題が生じている。本書は,これらの課題に対する深い洞察を示すことで,AIと著作権の接点をめぐる議論の一層の深化に寄与するものと期待される。
 著者陣及び座談会の参加者には,AIと著作権に関する第一人者が名を連ねている。法学,情報工学,実務家の視点から,この分野の最新動向と課題解決への道筋を示す本書は,AIと著作権の理解を深めたい幅広い読者層に強くおすすめできる一冊である。

(紹介者 会誌広報委員 G.T.)