法律実務家のための特許の基礎知識

編著城山康文 著
出版元有斐閣 四六判 286p
発行年月日・価格2025年6月発行 3,300円(税込)

 本書は,企業法務に関するテーマを中心としてコンパクトにまとめた法律実務家のための基礎知識シリーズの内,特許実務の基礎と対応のポイントを解説するものである。
 第1章で,知的財産の全体像と特許法についての概要が簡単に述べられている。分量は16ページと絞ってあり,第2章以降で早速,特許実務の解説が始まるため,実務で必要な知識を押さえたい読者がモチベーションを維持して読み進められる。2章以降の構成は,取り上げるテーマに関連する法律の解説,企業の法務・知財部員向けの対応ポイントの解説,参考となる判例紹介のセットで展開されており,ある程度実務を経験した中級者だけでなく初学者も十分理解できるよう工夫されている。
 第2章では,特許ポートフォリオの構築と題して,新規性・進歩性などの特許要件,出願書類の要件,拒絶対応など,権利取得までの実務が解説されている。出願公開のメリット・デメリット,オープン・クローズ戦略も触れられており,権利取得に加えて,有力な特許ポートフォリオ構築に必要な基礎知識が習得できる。
 第3章では,特許クリアランスがテーマであり,他社の特許/特許出願への対応手段として情報提供,異議申し立て,無効審判について解説されている。上記の対応手段をとるべきか,それとも静観すべきかといった点についても言及されており,制度の解説に留まらない点が面白い。
 第4,5章では,特許を受ける権利がテーマであり,職務発明や共同出願について解説されている。特に,特許権が共有に係るときの実施に関する注意点は参考になる。
 第6~9章は訴訟交渉に関するテーマで構成されている。訴訟交渉は,権利取得と比べて経験することが少ないため,個人的に本書で最も参考となった。特に第7章の特許交渉では,権利者と被疑侵害者の対応,被疑侵害製品の部品などが購入品である場合の非侵害保証とその履行についても解説されており,内容が充実している。また,第9章の特許侵害訴訟では,実体面の特徴や定石,手続き面や実務慣行に重点を置いて解説されており,実務をイメージできるよう工夫されている。特に,充足論/無効論の審理から始まり損害論の審理に続く2段階審理について,進行の一例が詳細に解説されている点は,訴訟の流れがイメージでき大変参考になる。
 第10,11章は,ライセンス契約や譲渡・担保設定取引について解説されている。特許権だけでなく,ノウハウの供与もライセンス契約の対象とするケースも述べられており,参考になる。
 特許実務で重要となるテーマについて,著者の経験も散りばめながら,丁寧に解説されていた。この充実した内容を,これほどコンパクトにまとめられている点に驚嘆させられる。知財・法務担当の方々に,是非,本書を手元に置いて参考にしていただきたい。

(紹介者 会誌広報委員 T.M.)