第10回インダストリー・コンサルテーション・グループ(ICG)会合及び第13回グローバルドシエ・タスクフォース(GDTF)会合等への参加報告

 2026年4月1日、韓国・ソウルにて、第13回GDTF会合および第10回ICG会合が、対面及びリモートのハイブリッド形式で開催されました。JIPAからは国際政策WGメンバーが現地およびオンライン形式の両方で参加しました(現地参加:伊東WGリーダ、加藤、久慈。オンライン参加:宮下、田中、池嶌、長、藤田)。
本会合では、グローバルドシエ、グローバルID、電子署名、グローバルアサインメント、図面様式統一、AI関連発明、IP5ガバナンスなど、多岐にわたる議題について議論が行われました。

以下、主な議題について簡単に紹介します。

1.事前ユーザ会合(3/31)


 5極ユーザ団体(JIPA、AIPLA、IPO、Business Europe、KINPA、PPAC)の代表者が集まり(PPAC、Business Europe はリモート参加)、GDTF及びICG会合の各議題について議論し、提言や意見をまとめました。
 特に、グローバルドシエについては、JIPAがクローズ条件の方向性を含めた提案を用意した上で議論を主導するとともに、5極ユーザ団体の合意を得ました。また、AIを活用したグローバルドシエの高度化案を紹介し、GDTF会合で提案することの賛同を得ました。
 また、WIPOが主導するグローバルIDやグローバルアサインメントの仕組みにつき、WIPO代表者も交えた協議を行なった他、USユーザより提案されたSTGIPA(トークンを利用した出願等の情報通信に関する新たなスキーム)については、GDTF会合でUS提案として紹介することし、各ユーザ団体は継続して検討を行うことになりました。電子署名、NET/AI関連の議題について、事前に検討したものをベースに議論し、ユーザの意見・提言をまとめました。

2.第13回グローバルドシエ・タスクフォース(GDTF)会合(4/1午前)

(1)グローバルドシエ優先5項目について


残る4項目(XML化、出願人名標準化、リーガルステータス、オフィス間文書共有)について、各庁より進捗報告がありました。JIPAが事前会合でとりまとめた提案内容を、ユーザを代表して発言・提言等を行いました。

① XML化
JPOより、MOIP、JPO、CNIPAにおいては対象となる主要手続書類のXML化が完了している一方、USPTO及びEPOには対応途上の部分があり、継続して推進する旨の説明がされました。これに対し、JIPAからは、各庁の取組みに謝意を示すとともに、クローズ条件を満たしているものの、JPOによる全庁のXML化の継続的な推進への期待を表明しました。

② 出願人名標準化
MOIPより、従来のグローバルマッピングテーブル(GMT)を中心とした検討から、WIPOのグローバル ID(GID)等の一意識別子の活用へ議論を発展させる提案がありました。これに対しJIPAからは、当該方向性を支持するとともに、これまでGMTで蓄積してきた成果をGIDプロジェクトにおいて有効に活用すべき旨を発信しました。

③ リーガルステータス
CNIPAより、WIPO標準SD-27に沿ったデータ交換の進展および、EPOとのパイロット完了が報告されました。これに対しJIPAからは、データ交換自体に加え、ユーザにとってどのような具体的利益があるかが重要であり、特にファミリー案件について法的ステータス情報を単一のビューで確認できる仕組みが有用であり、実装を要望しました。

④オフィス間文書共有
USPTOより、グローバルドシエで利用可能なデータを活用したフォームの事前入力や、より能動的なオフィス間情報共有の可能性について説明がありました。これに対してJIPAからは、同テーマについてUSPTOからの更なる説明への期待を表明しました。

(2)その他


①AIを活用したグローバルドシエの高度化
JIPAからは、現行のグローバルドシエは個別案件の確認には有用である一方、出願群の抽出や各庁の審査傾向の分析といった戦略的活用には限界がある点を指摘しました。その上で、自然言語による検索・分析を可能とすることで、より戦略的なツールへ発展させるべきとの考えを示しました。これに対し各庁からは、提案自体は有益であるとの認識が示された一方、実現にはデータ構造やアーキテクチャの見直しが必要とのコメントがありました。

②グローバルドシエを利用したフォーム事前入力
USPTOより、e-IDSフォーム事前入力のベータ版、非特許文献の検索機能、非特許文献引用へのデジタルオブジェクト識別子(DOI)付与検討、および関連先行技術の取組み拡大が紹介されました。ユーザ団体からは、これらは負担軽減や入力ミス削減の観点で有用であるとの評価が示されました。なお、IDSの出願人負担を軽減する目標に対して、e-IDSは一時的な解決策なのか、永続的なものなのかをユーザ団体から問い合わせたところ、USPTOより、現時点では明確でなく、関連先行技術のような他のイニシアチブの進展状況を確認したいとの回答を得ることができました。

③グローバルID / 電子署名
WIPOからは、KYB/KYCによる本人確認を通じて出願人・権利者を一貫して識別するグローバルIDのロードマップが説明され、将来的にグローバルアサイメントへの活用計画が共有されました。あわせて、ユーザ団体からは、電子署名への活用や関連インフラについて、今後の計画の具体化を求める意見が示されました。
また、USユーザから、グローバルアサイメントの実現等のため、トークンによってセキュリティを強化し、構造化XMLによる共通化の提案が具体例とともに紹介され、引き続き議論することとなりました。

会場の様子
現地参加メンバー

3.第10回インダストリー・コンサルテーション・グループ(ICG)会合(4/1午後)

(1)グローバルアサインメント

WIPOからは、Global IP Assignment Platform(GIPAP)の構想とロードマップが紹介され、各国制度の違いや現地代理人の要件等を踏まえつつ、任意利用可能なプラットフォームとして段階的に構築する考え方が示されました。またEPOからは、ブロックチェーン技術を活用した概念実証が紹介されました。ユーザ団体側からは、費用対効果、簡素性および実用性の観点から更なる検討を求める意見が示されました。リード庁であるUSPTOから、WIPOによる実現可能性の検討結果を踏まえて今後の計画について検討していく旨が説明されました。

(2)図面様式統一

JPOより、比較表の更新状況およびカラー図面受入れに向けた検討状況が報告されました。これに対しJIPAからは、ユーザを代表してこれまでの進展に謝意を示すとともに、JPOによる継続的な検討と、各庁の継続的な協力・連携への期待を表明しました。

(3)NET/AI

JPOよりAI関連発明の審査実務比較表の更新状況が、MOIPよりAI生成発明の発明者性に関する比較表の更新状況が共有されました。各庁とも、発明者は自然人である必要があり、AI自体を発明者として認めない点で一致していることが確認されました。また、CNIPAからAIの発展に伴う特許制度上の課題に対応しつつ、AIを活用して審査高度化を図り、AIと知的財産の相互成長を実現する取り組みが紹介されました。

ユーザ団体からは、庁内およびユーザ側において生成AIの利用が拡大していることを踏まえ、以下の点を提案しました。

  • 分類ツール等、庁内で利用されるAIの透明性確保と、可能な範囲でのユーザへの利用開放
  • 生成AI活用に伴う記載不備増加等の影響のモニタリングと、問題発見時の対処
  • USPTOのAIサーチのパイロットプログラム「ASAP!」の状況(利用状況や効果等)の情報共有
  • AIに関するユーザと各庁との継続的かつ密接なコミュニケーションの強化
  • IP5会合に合わせたAIサミットの開催

(4)IP5ガバナンスについて

EPO及びUSPTOから、意思決定の改善、作業の合理化、ユーザ団体からの提案プロセスの整理等を目的とする見直しの進捗が報告されました。あわせて、IP5 Vision Statementについても、特許審査の質や運用効率といった技術的使命に焦点を当てた形で見直す方向性が示されました。

4.次回GDTF/ICG会合他

次回の GDTF/ICG会議は、CNIPA主催により、来年3月から4月頃に開催予定です。
また、JPOより、5庁特許庁長官会合及びPPH20周年イベント(6/10~6/12開催)の紹介がありました。