米国特許法講義

編著武重竜男,荒木昭子 著
出版元商事法務 A5判 272p
発行年月日・価格2020年9月発行 3,850円(税込)

 米国の実務初心者である私は,米国特許の権利化や活用に際して,「なぜ日本と考え方が違うんだろう」「なぜこんなルールがあるんだろう」と疑問に思い,壁にぶつかることがしばしばある。そこで,米国特許法の考え方を根本から学べる書籍はないものかと思っていたところで,本書を手に取った。

 本書は,まず第1章で米国の特許制度の歴史やクレームのドラフティングに関する基礎的な事項が解説されている。第2章では,特許要件に関する特許法上の規定と,現在の運用のもととなる判例について詳しく解説されている。第3章では,特許権の権利者や共同発明者の権利の考え方について解説され,第4章~第6章では特許権侵害にかかる論点,第7章~第9章では特許権にかかる手続きについて解説されている。第10章では意匠特許の特徴がまとめられており,第11章では近年注目されている標準必須特許とパテント・プールに関して,米国での議論状況が解説されている。米国が判例法(コモン・ロー)の法域であることから,米国特許法の考え方のベースとなる19世紀~20世紀前半の古い判例も多く解説されているが,もちろん最新判例や最新実務にも対応しており,この一冊で米国特許法の歴史と今を体系的に学ぶことができる。

 日本の特許法との違いにも触れられており,特許適格性を例にとると,日本の特許法では発明の定義が2条1項で明確に規定されているのに対し,米国の特許法101条では特許適格性の認められる主題について広い概念だけが規定されていて,判例法にて例外ルールが作り上げられてきた。制定法の法域に属する日本と,判例法の法域に属する米国との違いがはっきり表れており,特許法上の保護対象そのものから考え方が違うのか,と印象に残った。

 米国特許法に関する実務書はこれまでにたくさん出版されており,いざ米国特許実務を勉強しようとすると,どれを選んだらいいのか迷ってしまう人は少なくないだろう。私は,米国特許実務を学ぶための最初の一冊としてぜひ本書をおすすめしたい。

 本書は,帯にも「米国特許法を深く学ぶための基礎体力を養い,留学経験の有無にかかわらず,米国ロースクールでの学びを味わうことができる」と書かれているように,米国ロースクールの講義のコンセプトを活かしつつ,米国特許法の基本的な考え方を丁寧に論じていることが特徴である。興味のあるテーマだけ拾って読んでも参考にはなるが,本書は272ページととてもコンパクトにまとめられているため,ロースクールの授業を受けるような気持ちで,ぜひ一冊通して噛みしめながら読んでもらいたい。

(紹介者 会誌広報委員 T.S)