| 編著 | 本郷 貴裕 著 |
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| 出版元 | 中央経済社 A5判 244p |
| 発行年月日・価格 | 2022年1月20日発行 3,080円(税込) |
ユニークな視点の書籍である。英文契約書の読み方や構造,その特有の言い回しについての解説書は,本誌の「英文契約書 最初の一歩」(2020年10月号および11月号掲載)をはじめ数多く見かける。しかし,契約書の修正方法にフォーカスした書籍は殆ど見かけない。企業の契約担当者であれば後者のスキルも求められるのが通常だが,多くの企業では書籍を通してではなくOJTを中心として担当者を育成していることが理由として挙げられるだろう。本書では契約書修正の目的を①相手方に課したい義務や責任を追記すること,②自社の義務や責任を狭めること,③不明確な条項を明確にすることの三つに分けている。そのうえで,修正の際に使う頻度が高い25パターンを抽出し,それぞれについて問題点と解決策を提示している。
いずれも基本的な内容であり,契約実務担当者であれば確認的な内容が多くを占める一方で,気付かされた点もいくつかあった。2つ紹介したい。
1点目は契約上の当事者の義務である。この点,筆者は義務を負っている当事者は「最後まで,いくらかけてでもやり遂げること」に本質がある厳しいものだとしている。このことに関し,多くの人は契約書で責任上限を定めておけば一定の金額までしか負担しなくて良いと考えるだろう。筆者は,自身が所属していた大手電機メーカーの米国の子会社が請け負った原発建設案件で,当該子会社が最終的に建設できないこととなったため,親会社が追加費用を負担せざるを得なくなり,結果的に自社の優良事業部門を手放さなくてはならなくなった例を紹介している。請負者は理論上,破産して費用を負担する能力が無くなるまで,作り続ける義務があり,損害賠償責任の上限とは無関係だとしている。私は今まで,これは原発建設の請負契約中に責任上限を定める規定がなかったために生じた悲劇だと認識していたが,これが誤りであったことに気付かされた。
2点目は契約書の条文についてである。英文契約について一定の知識や実務を積んでいると,不必要に冗長で難解な文案をドラフティングする傾向があると指摘する。例えば受動態で書いてみたり,同一の意味がある文言を繰り返してみたりである。後者については防御免責条項におけるdefend,indemnify,hold harmlessのように国や米国内の州によって異なった解釈がされ得る文言は別として,契約上の効果が同一であれば可能な限りシンプルな方が良いと説く。私自身,耳の痛い指摘であった。
私の周りでも英文契約書の内容は理解できるが,どのように修正したら良いかが分からない,といった声はよく聞く。本書で記載されている内容は,英文契約にある程度触れた経験のある者であればそう難しい内容ではない。英文契約について一定の知識があることを前提とした応用編として,手元に置いておきたい一冊である。
(紹介者 元会誌広報委員 K.I)
