| 編著 | 安藤 和宏 著 |
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| 出版元 | 弘文堂 A5判 410p |
| 発行年月日・価格 | 2025年5月27日発行 4,510円(税込) |
本書は,タイトルの通りアメリカ著作権法の本格的な概説書である。全16章から構成されており,各章において理論と実務の両面から制度の理解を深めることができる。
まず紹介したいのは,第7章「終了権制度」である。終了権とは,著作者またはその遺族が,過去に締結した著作権契約を一定の条件のもとで一方的に終了することができる権利である。この制度の立法趣旨は,著作者が著作物の価値に見合った正当な報酬を受け取る「第二の機会」を得られるようにする点にある。交渉力の弱い著作者を保護するために設けられたアメリカ独自の制度であり,日本の著作権法には存在しない。
本章を最初に紹介する理由は,著者の経歴に深く関係している。著者は音楽業界において法務を中心にキャリアを積み,自然人クリエイターや実演家が,交渉力で優位に立つレコード会社や音楽出版社との契約交渉において苦境に立たされる姿を数多く目にしてきた。こうした経験を通じて,著者は長年にわたり,自然人クリエイターおよび実演家の法的保護を研究テーマとして取り組んできた。第7章は,著者の問題意識と思いが最も色濃く反映された章であり,ぜひ読者に注目していただきたい章である。
自然人クリエイターや実演家の法的保護という観点からは,第12章「実演家の権利と保護」も重要である。アメリカでは,連邦憲法に根拠を持たない連邦法を制定できず,連邦憲法が著作者を保護の主体としているため,著作者以外の者を保護対象とする著作隣接権制度の整備が困難である。しかし,実演家の法的保護が全くないわけではなく,契約法,労働協約,連邦著作権法における録音物の著作者としての保護,コモン・ロー上の著作権,パブリシティ権,ランハム法など,複数の法的手段によって保護が図られている。エンターテインメント大国であるアメリカにおける実演家の保護の実態を理解する上で,第12章は必読である。
もっとも,本書は著者の研究テーマに偏ることなく,アメリカ著作権法の全体像を概説している点において,実用性が高い。判例を重視するアメリカの法制度に即して,各章では多数の判例が紹介されており,制度の背景や運用実態を具体的に理解することができる。
特に,第5章「権利の移転と未知の利用方法」,第8章「モラル・ライツ」,第10章「フェア・ユース」,第15章「DMCA」( Digital Millennium Copyright Act)などは,アメリカ著作権法の特徴的な制度を扱っており,第7章および第12章と併せて読むことで,より深い理解が得られるであろう。
(紹介者 会誌広報委員 H.O.)
