| 編著 | 宇佐美善哉 編著,倉賀野伴明・鳩貝真理 著 |
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| 出版元 | 青林書院 A5版 288p |
| 発行年月日・価格 | 2025年1月発行 4,400円(税込) |
本書は,外資系の法律事務所,製薬メーカー,医療機器メーカーに所属する3名の弁護士が共同研究開発契約の法律実務について網羅的に解説するものである。
共同研究開発契約の各条項については,英文の条項例がその対訳とともに紹介されている点で特徴がある。共同研究開発契約の和文の条項例を掲載する文献はいくつか存在するが,英文ベースのものはそれほど多くない。いわゆるオープンイノベーションが進み,外国の企業や大学との共同研究開発も当たり前になっている現在において,英文契約を軸に据えた本書は貴重である。
各条項の解説では,一般的な説明にとどまらない実務上のポイントが紹介されている。例えば共同研究開発契約において最も争点となりやすい成果帰属条項については,権利分配方法のバリエーションとともに,各当事者の費用負担額だけで権利分配のあり方を決めるべきでないといった実務的観点に触れられている。
また,各条項の解説で独占禁止法上の問題に頻繁に言及されている点も本書の特徴の一つである。共同研究開発契約については公正取引委員会が「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針」を公表しているが,実務では当該指針をいかに実際の案件に当てはめるかが重要となる。本書では,競業避止義務や成果利用条項といった各条項の解説の中で独占禁止法についても説明されているほか,「共同研究開発と独占禁止法上の留意点」という独立の章を設け,米国及び欧州のガイドラインの概要にも触れながら,公正取引委員会における過去の相談事例に基づく事例検討がなされており,独占禁止法の実務感覚を養うことができるように工夫されている。
さらに,共同研究開発の当事者の立場の違いを意識した解説も見られる。例えば民間企業同士の共同研究開発と,いわゆる産学連携の取組とでは,同じ共同研究開発契約といっても実務上の留意点は異なる。本書では,「共同研究開発の相手方に応じた留意点」という項目の中でこの問題が取り上げられており,不実施補償,成果公表,贈収賄規制,費用負担といった代表的な争点について,関連する裁判例を紹介しながら,具体的に解説されている。
本書の解説対象は,共同研究開発契約それ自体にとどまらない。秘密保持契約,マテリアル・トランスファー契約,フィージビリティ・スタディ契約等,共同研究開発に関連して締結される他の契約類型についても条項例付きで解説されており,網羅性が高い。
このように,本書は類書には見られない特徴を有しており,共同研究開発契約の法律実務について基礎を学びたい人にも,新たな観点を得たい人にも,有益な一冊である。
(紹介者 会誌広報委員 T.M)
