| 編著 | 田中浩之・松井佑樹 編著 |
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| 出版元 | 第一法規 A5判 548p |
| 発行年月日・価格 | 2025年3月25日発行 7,260円(税込) |
2018年2月の初版発行から7年,その間の法改正,裁判例,学説等の動向を織り込み,改訂版である本書が出版された。本書の特徴は,端的にいえば,第一に体系(章立て)がユニークであること,第二に知的財産制度を俯瞰する実務者向けに必要十分な内容であること,そして第三に実務上重要な最新論点がコラムにまとめられていることにある。
第一の特徴であるが,一般的な知的財産法のテキストであれば,各法を順に説明する,というスタイルを採るところ,本書は,「ブランドの保護」(第2編),次いで創作物についての保護(「技術の保護」(第3編),「デザインの保護」(第4編)等)といった具合に,制度の目的や保護対象である情報の性質の違いに着目した分類を施し,各編において問題となる法を横断的に解説している。このような体系を採用することにより,眼前の問題にあたり,実務家が関連する重要な法制度をもれなく検討できるように工夫されている。例えば第1編では,商標等の保護に関し,商標法,不正競争防止法,会社法・商法,GI法等の解説に加え,冒頭の第1章で相互の制度上の違いや,その違いに応じた使い分けの実務上の指針について示しており,改めて各法の横断的・実践的な理解を深めてくれる。また,特許法からの解説ではなく,非技術系の読者が挫折しないよう,商標法から開始しているところも特徴的である。
次に第二の特徴であるが,本書は,実務において知っておくべき裁判例や審査基準を中心にバランス良く記述しており,また,よく遭遇する業界用語についても言及を怠らない。脚注で引用されている教科書や裁判例もオーソドックスなものであり,実務家が安心して読み進めることができるよう,内容が精査されている。加えて,現在も問題が生じ得るものであれば,法改正前の制度にも触れられている(例えば職務発明制度)。実務者同士の議論において必要不可欠な知識は,本書に概ねまとまっていると言って過言でない。
第三の特徴として挙げるのは,法的論点を紹介するコラムの充実度である。特に改訂版では,メタバースや生成AIに関連した最新・最先端の諸論点についての紹介が随所に散りばめられており,コラムだけを読み進めても面白い。海外で議論され,今後日本でも問題となり得る概念等(例えば「逆混同」)の紹介も見られる。こうして,本書は基礎レベルにとどまることなく,弁護士・弁理士といった専門家と専門用語を(また時には専門的な雑談をも)交えつつ事案の検討を行う場面においても,臆することのないレベルの知識を獲得することができるよう,読者を高いレベルに導いており,希有で贅沢な一冊に仕上がっている。
入門レベルを卒業した実務家にとって,是非手に取りたい一冊である。
(紹介者 会誌広報委員 K.B)
