| 編著 | 早稲田大学次世代ロボット研究機構 AIロボット研究所 知的財産・イノベーション研究会 森 康晃 編 |
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| 出版元 | 日科技連出版社 A5判 216p |
| 発行年月日・価格 | 2023年7月19日発行 3,300円(税込) |
本書は,早稲田大学理工学術院で知的財産やイノベーションの科目を講義する講師の方々が中心となって執筆されたものである。
大学院や大学の学生だけでなく,企業で実務に当たっている方に向けて,ビジネスの最前線で理解しておかなければならないイノベーション論や知的財産について,基礎から応用的な内容がまとめられている。
全5章で構成されているが,第1章から第3章は,それぞれ「AIと知財」,「海外におけるAIと知財政策」,「イノベーションと起業」というテーマで,AIや知的財産の概要説明や,世界や日本におけるAIの技術・政策動向,イノベーション論について解説されている。知的財産については初学者向けの内容も多く,実務者にはやや物足りない感もあるかもしれないが,AI,知的財産,イノベーション論の概要を学べる内容となっている。
第4章は,「AI時代におけるバイオビジネス特許」というテーマで,医薬品分野に特化した章となっている。医薬品分野は,医療制度や薬事行政との関係もあり,他の分野とも大きく異なる点があることから,異なる点を中心に解説646されている。コロナウイルスによるパンデミックへの対応として活用が検討されたパテントプールの手法や,先進国と途上国のライセンス供与における利害の対立,生物多様性条約の枠組みや動向についても概説されている。私にとっては専門外で不慣れな分野であるが,全体像の理解に役立つ内容であった。
第5章は,「AIによる知財権侵害の法的規制の考え方」というテーマで,個人的に最も関心を持って読んだ章である。
AIは創造的な仕事を行えるだけでなく,情報やデータの処理において,他者の知財権を侵害し,損害をもたらす行為を行う可能性もある。AIが知識の革新を促進する役割をより発揮するためには,創造の成果を保護するとともに,知財権の侵害活動を法律により規制する必要もあるということで,AIによる侵害とその規制について解説されている。著者によると,これまで十分に重視されておらず,深い理論研究がなされていないということだが,既存の権利侵害責任制度を直接または拡張して適用する,もしくは,AIのための法的責任体制を新たに確立するという,2つの視点で考察されており,本問題を体系的に理解することができる。
AI,データ活用が盛んとなってきている中で,AIを活用したビジネスを検討されている方や,この領域における知財関連の問題を学びたい方に紹介したい書である。
(紹介者 会誌広報委員 K.K.)
