商標実務入門〔第3版〕-ブランド戦略から権利行使まで-

編著片山英二 監修,
阿部・井窪・片山法律事務所 編
出版元民事法研究会 A5判 396p
発行年月日・価格2025年1月17日発行 4,730円(税込)

 本書は,知的財産実務の第一線で活躍する片山英二氏の監修のもと,阿部・井窪・片山法律事務所が編纂した商標実務の解説書である。2009年の初版以来,商標法の改正に即して改訂を重ねており,今回の第3版では,商標の登録要件緩和やコンセント制度などに触れつつ,近年の実務と判例の蓄積を踏まえて見直されている。
 本書は,コンセプトに「商標制度の一般的な解説書ではない」とある通り,単なる商標制度の解説ではなく,実務家の視点から「ブランドの保護と活用」を体系的に解説されている点に大きな特徴がある。冒頭では「ブランドとは何か」という問いから始まり,商標法による保護制度,出願・登録に係る特許庁に対する手続実務,ブランドの管理・活用,商標権の権利行使,侵害警告を受けた場合の対応,商標法以外の保護など,実務の流れに沿って構成されている。特に後半の「ブランドの管理・活用」パート以降は,商標制度の説明を凌ぐ分量を割いており,実務家にとっての関心領域が反映されているといえる。
 例えば,商標使用の社内基準の設定や,コーポレート・ブランドのグループ企業内使用,商標ライセンスに関する契約書の雛形,水際対策の具体的な手続,社内教育に関する提言など,単なる理論ではなく,実務に即した記述が随所に見られ大変参考になる。商標権の権利行使についても,単に「侵害があれば権利行使をする」といった表面的な説明ではなく,対応の選択肢とその対応の際に留意すべき点が分かりやすく整理されている。実務担当者が課題に直面した際には,まずは本書を読んだ上で対応を考えるといったことが可能である程,記載が充実しており,まさに実務上の課題解決に直結する手引書として機能する。
 また,全体を通して,説明の随所に最新判例や重要判例を取り入れた構成がなされており,制度の考え方の説明と実際に問題となった事例を併せて確認でき,一体的に理解できるよう工夫されている。判例紹介は簡潔かつ要点を押さえた記述で,法律文書に不慣れな初学者にも抵抗なく読み進められる。実務で何か迷った際には関連ページを開けば,関連する判例へのアクセスができる点も,実務書としての利便性を高めている。
 本書は,商標実務に携わる企業知財部門の担当者のみならず,弁護士・弁理士,企業の法務部門やマーケティング部門の担当者にとっても有益である。ブランド戦略の立案から権利行使までを実践する上で,実務上の疑問が生じた際にすぐに参照できるよう机上に常備し,日常業務の中で繰り返し活用してほしい一冊である。

(紹介者 会誌広報委員 S.I)