| 編著 | 杉光一成,加藤浩一郎 編著 |
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| 出版元 | 発明推進協会 A5判 356p |
| 発行年月日・価格 | 2025年4月発行 3,410円(税込) |
本書は,知財部のない企業,小規模な組織しか持たない中小,スタートアップ企業や大学等における知財担当者,知財に興味がある方を対象とした知財に関する法律とその管理・戦略実務の手引書である。知財業務を外部専門家にすべて任せるのではなく,社内と外部専門家で役割分担することを目指す姿としており,本書を読むことでどのように外部専門家を活用するべきか分かるようになっている。
本書は3部から構成されている。第1部は「基礎編 知的財産法の知識」である。知的財産に関する法律や制度を,実務経験が少ない人にも分かりやすいように簡潔に解説している。その他に,外国特許制度,ライセンス契約,職務発明,営業秘密等も紹介しているため,実務の広い範囲をカバーしている。
第2部は「実践編 知的財産管理」である。知財実務における管理方法や対応策が実務目線で紹介されているため,実際の実務と照らし合わせながら理解を深めることが出来る。ここでは出願管理,事業管理,紛争管理等について全部で42のテーマが掲載されているが,中でも紛争管理は,紛争実務の未経験者がイメージを得るために有用である。また,基礎的知識だけでなく,今回発売された第3版では昨今話題のAIを取り入れた知財実務も追加され,AI活用に興味がある実務者にとっても必読である。全体を通じて,企業が遭遇する機会を実例に挙げているため,知財実務者ならば一度は疑問に思ったことがあることが書かれており大変面白かった。
第3部は「実践編 知的財産戦略」である。第2部は知財のリスク管理の側面に焦点を当てており,第3部はリスク管理を超えて戦略的に知財を経営に活用する視点が入っている。知財を企業の経営戦略の中核とするために,それを担う知財部員が今後活躍するための知識とスキルは大変参考になった。なお,第3部は第3版にてテーマを約1.5倍に追加しており,IPランドスケープ,デザイン経営,国際標準化戦略,コーポレートガバナンス・コード等の最近のテーマも追加されている。
本書は,知財部のない企業等に限らず,中規模以上の企業の知財担当者が知識や実務手順を振り返るのにも適していると思われる。例えば,ルーティン化した知財業務について業務手順,業務の目的・意義を再度確認したいときや未経験の知財業務に取り掛かる前に前提知識を得たいときに該当のテーマを一読するだけで重要なポイントを押さえられる。本書は大変読みやすい手引書であるため,知財実務に取り組む上で,企業の規模や知財経験によらず,多くの知財担当者のデスクに置いていただきたい一冊である。
(紹介者 会誌広報委員 N.K)
