スタートアップの法律相談

編著山本飛翔,菅原稔,尾下大介 編集
出版元青林書院 A5判 376p
発行年月日・価格2023年5月発行 5,390円(税込)

 「スタートアップの法律相談」は,ビジネスの立ち上げからイグジットに至るまで,スタートアップの各段階で直面するさまざまな法的問題に焦点を当て,スタートアップが法的リスクを最小限に抑えながらビジネスを展開するための実用的なガイド書である。本書のカバーする法律的問題は網羅的であり,知的財産権の保護,契約の取り決め,株式配当,投資家との交渉,ビジネス戦略,税務,人事,ガバナンス,コンプライアンスなどが,具体的なケーススタディを交えて説明されている。知的財産権の保護については,商標と商号,権利の帰属,知財戦略,職務発明など,過不足なくカバーされている。各法律的問題を取り上げた専門書籍と異なり,スタートアップが知っておくべき内容が,ビジネスの成長の時系列を考慮して構成され,起業家・経営者のニーズに応えるものであろう。
 本書は,Q&A形式で構成されており,まず,「Q」でスタートアップが直面する法的な課題や注意点を挙げ,次に,「A」で法的なトラブルを回避するための実践的なアドバイスを,ポイントをおさえた短い解説,詳細な解説,引用文献と段階的に提供している。スタートアップで起きうる法律・知財の諸問題について,広く浅く知りたい場合でも,特定のトピックについて深い知識を得たい場合のいずれでも,本書は役立つと考える。
 さらに,本書は,特定の法的テーマごとに各分野の法律専門家が執筆することで,起業家が直面する法的問題とその対応策を包括的かつ専門的に解説している。また,起業家が知っておくべき法的基本用語や概念もわかりやすく解説されており,法律の専門知識がない人でも理解しやすい工夫がされている。
 そして,本書は,スタートアップ成長の時系列に沿ってQ&A形式で構成されているため,会社設立時に知財権の帰属関係をどのような観点から整理しておくべきか,ビジネスモデルによっては,シード期に許認可の取得等の法規制への対応を行っておくこと,アーリー・ミドル時で大企業やアカデミアとアライアンスを行う際に不利にならないよう何をすべきか等,起業家・経営者に法的問題に対する早期の対処やプロアクティブなアプローチを促すことができ,さらに,起業家・経営者が法的な知識を段階的に深めることを助けるガイド書となりうる。起業家・経営者が,弁護士や弁理士の助言を受ける前段階で,基本的な知識を得るための一冊としておすすめであり,また,スタートアップ企業をサポートする弁護士や弁理士にとっても,顧客のニーズを理解するためのガイドとして有用である。
 最後に,本書は,読み物としても,問題に直面しそうなときに手を伸ばす資料としても活用できる内容となっている。スタートアップの関係者だけでなく,スタートアップに興味のある弁理士や弁護士の皆様にも,是非,手元に置いていただきたい。

(紹介者 会誌広報委員 K.I.)